「違うそうじゃない」をなくす:誤解を解くための話し方と聞き方
コミュニケーションは、相手と自分の間で情報や感情をやり取りするプロセスです。しかし、どれだけ注意しても、会話の中で「あれ?なんか違うな」「そういうつもりで言ったんじゃないのに」と感じる誤解は起こりえます。誤解は、人間関係に小さなひびを入れたり、時には大きなトラブルにつながったりすることもあります。
この「ふたりで話そうガイド」の記事では、なぜ誤解が起きるのか、そして誤解を未然に防ぎ、もし起きてしまった場合にどうすれば落ち着いて解決できるのか、基本的な話し方と聞き方のコツをご紹介します。日々の会話で「なんか伝わらないな」と感じることがある方の参考になれば幸いです。
なぜ会話で誤解が起きるのか?
誤解は、悪意がなくても簡単に発生します。いくつかの主な原因を理解しておきましょう。
- 言葉の選び方やニュアンス: 同じ言葉でも、人によって受け取り方が違うことがあります。特に抽象的な表現や比喩は、意図と異なる解釈を生む可能性があります。
- 情報の不足または過多: 必要十分な情報が伝わらなかったり、逆に情報が多すぎて混乱させたりすることがあります。前提知識の違いも影響します。
- 非言語コミュニケーションとの不一致: 話している内容と、声のトーン、表情、ジェスチャーなどが一致しない場合、相手は非言語メッセージの方を強く受け取る場合があります。
- 聞き手の先入観や感情: 聞き手が特定の先入観を持っていたり、感情的になっていたりすると、話の内容を客観的に聞くことが難しくなります。
- 話し手の感情: 話し手が感情的になっていると、論理的に話すことが難しくなり、言葉足らずになったり、きつい口調になったりすることがあります。
- 背景や文脈の共有不足: 相手が自分と同じ背景や文脈を共有していると思い込んで話すと、話が飛躍しているように聞こえたり、意図が伝わりにくくなったりします。
誤解を防ぐための「話し方」のコツ
誤解をゼロにすることは難しいですが、話し方を少し工夫することで、ぐっと減らすことができます。
- 具体的かつ明確に話す: 曖昧な表現を避け、「〇〇について話したい」「〜はいつまでに必要です」のように、主語、目的、内容を具体的に伝えましょう。
- 例:
- 曖昧: 「あの件、どうなった?」
- 具体的: 「先週お願いした〇〇の件、進捗はどうなっていますか?」
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- 一つの話題に集中する: 複数の話題を一度に話すと、相手はどれに集中すれば良いか分からなくなります。話したいことが複数ある場合は、一つずつ区切りながら話しましょう。
- 専門用語や業界用語を避ける、または説明を加える: 相手が知らない可能性のある言葉は、使わないか、使う場合は簡単な説明を加える配慮が必要です。
- 相手が理解しているか確認する: 一方的に話し続けるのではなく、「ここまでで何か質問はありますか?」「今の説明で伝わりましたか?」のように、途中で相手の理解度を確認しましょう。
- 非言語メッセージにも注意を払う: 穏やかな声のトーンで話す、きつい表情にならないようにするなど、言葉以外のメッセージも意識しましょう。
誤解を防ぐ・解くための「聞き方」のコツ
話し方と同じくらい、聞き方も誤解を防ぐ上で重要です。相手の話を正しく理解しようとする姿勢が大切です。
- アクティブリスニングを心がける: 相槌を打つ、アイコンタクトをする、相手の言葉を繰り返すなどして、「あなたの話をしっかり聞いています」という姿勢を示しましょう。
- 相手の話を最後まで聞く: 途中で遮ったり、自分の意見を被せたりせず、相手が話し終わるのを待ちましょう。最後まで聞くことで、相手の全体的な意図をより正確に把握できます。
- 不明な点は質問する: 分からないことや曖昧に聞こえる部分があれば、「〇〇というのは、具体的にはどういうことですか?」「つまり、〜ということでしょうか?」のように質問して確認しましょう。推測で進めないことが重要です。
- 感情ではなく事実に焦点を当てる: 相手が感情的に話している場合でも、話の内容(事実や具体的な出来事)に冷静に耳を傾けるように努めましょう。感情の背景にある相手の考えや要求を理解することを目指します。
- 相手の意図を確認する: 相手が話し終えた後、「〇〇さんがおっしゃりたいのは、〜ということだと理解しましたが、合っていますか?」のように、自分の理解が正しいか確認することで、誤解を防ぐことができます。
誤解が起きてしまった時の「解決方法」
誤解が完全に防げなかった場合も、適切な対処をすれば関係性の悪化を防ぎ、より良い関係を築くきっかけにもなり得ます。
- まずは落ち着く: 誤解された、あるいは相手を誤解してしまったと感じたとき、感情的になりやすいですが、深呼吸をするなどして一度冷静になりましょう。感情的な状態では、建設的な話し合いは困難です。
- 相手の言葉を繰り返して確認する: 「〜という風に聞こえたのですが、私の理解は合っていますか?」と、相手が言ったこと(あるいは自分が言ったと相手が受け取ったこと)を繰り返して確認します。これにより、何がどう誤解されているのかの焦点が定まります。
- 自分の意図を丁寧に説明する: 誤解が明らかになったら、「私が言いたかったのは、〇〇ということだったんです」「あの時ああしたのは、〜という意図があったからです」のように、自分の真意や背景を丁寧に説明します。この際、言い訳がましくならないよう、落ち着いたトーンを心がけましょう。
- 必要であれば謝罪する: もし自分の言葉足らずや配慮不足が誤解の原因になった場合は、「私の説明が悪くて、誤解させてしまい、すみません」と素直に謝罪することも大切です。謝罪は相手を攻撃するものではなく、より良い関係を築くための前向きな一歩です。
- 相手の気持ちや考えに寄り添う: 誤解によって相手が不快な思いをしている可能性がある場合は、「私のせいで嫌な思いをさせてしまったなら、ごめんなさい」「〇〇さんはその時、そう感じたんですね」のように、相手の感情や受け止め方に寄り添う言葉を伝えることも、関係修復には有効です。
- 今後のために話し合う: 同じ誤解を繰り返さないために、「どうすれば次に同じようなことが起きないか、何かできることはありますか?」のように、再発防止について一緒に考える姿勢を示すことも重要です。
まとめ
会話における誤解は誰にでも起こりうる自然なことです。大切なのは、誤解を恐れるのではなく、誤解が起きにくい話し方・聞き方を意識すること、そしてもし誤解が起きてしまった場合に、感情的にならずに建設的に対処する方法を知っておくことです。
今回ご紹介した基本的なコツを日々のコミュニケーションの中で少しずつ意識することで、「違うそうじゃない」といったすれ違いを減らし、相手との相互理解を深めることができるでしょう。誤解を適切に乗り越える経験は、お互いの信頼関係をより強くすることにもつながります。ぜひ、できるところから試してみてください。