「でも」「だって」を減らす基本:穏やかに違いを伝えるコミュニケーション術
人間関係において、円滑なコミュニケーションは相互理解を深め、心地よい関係を築くための大切な土台となります。会話の中でつい使ってしまいがちな「でも」「だって」といった言葉は、無意識のうちに相手に否定的な印象を与えてしまうことがあります。これらの言葉を減らすことは、穏やかに自分の意見を伝え、より建設的な対話を行うための基本的なステップです。
この記事では、「でも」「だって」といった言葉がなぜコミュニケーションにおいて課題となりうるのか、そしてそれらを別の言葉に置き換え、穏やかに違いを伝えるための基本的なコミュニケーション術について解説します。
「でも」「だって」がコミュニケーションにもたらす影響
私たちは日常的に、相手の意見に対して自分の考えを述べたり、状況を説明したりします。その際、「でも」「だって」といった言葉を接続詞として使うことがよくあります。しかし、これらの言葉は相手の話を「否定する」「反論する」「言い訳する」といったニュアンスで受け取られやすく、次のような影響を与える可能性があります。
- 相手を否定されたと感じさせてしまう: 相手は自分の意見や気持ちを受け止めてもらえなかったと感じ、話す意欲を失うかもしれません。
- 会話が攻撃的・対立的になる: 否定から入ることで、お互いが自分の正当性を主張するような雰囲気になりやすく、建設的な話し合いが難しくなります。
- 言い訳がましく聞こえる: 特に「だって」は、自分の行動の理由を説明する際に使われがちですが、状況によっては責任逃れや言い訳のように聞こえてしまうことがあります。
- 関係に壁を作ってしまう: 無意識のうちに否定的な言葉を使うことが癖になっていると、相手はあなたに対して心を開きにくくなるかもしれません。
もちろん、意図せず口にしてしまうことは誰にでもあります。しかし、これらの言葉が持つ力を理解し、意識的に使用を控えることで、会話の質は大きく変わる可能性があります。
「でも」「だって」を別の言葉に置き換える基本
では、「でも」「だって」を使わずに、穏やかに自分の意見や状況を伝えるにはどうすれば良いのでしょうか。大切なのは、まず相手の言葉を一度受け止める姿勢を示すこと、そして、否定ではなく「追加」や「異なる視点」として自分の話を続けることです。
具体的な置き換えのヒントをいくつかご紹介します。
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まず相手の意見を受け止める言葉を使う:
- 「なるほど」「おっしゃる通りですね」
- 「たしかに、〜ですね」
- 「〜という視点、大変参考になります」
- 「よく理解できました」
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接続詞を使い分ける:
- 追加や補足:「そして」「それに加えて」「加えて言いますと」
- 異なる側面や別の可能性:「一方で」「その点については、〇〇という考え方もあります」「〇〇という側面から見ると」
- 結果や結論:「そのため」「したがって」
- 自分の考えを提示:「私としては」「私の考えでは」
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自分の意見や状況を「提案」や「情報提供」として伝える:
- 「〇〇というのはどうでしょうか?」
- 「〜という状況がありまして」
- 「もし〜でしたら、△△になるかと思います」
- 「〜について、少し補足させてください」
具体的な言い換え例
いくつかの日常的な会話のシチュエーションを例に、具体的な言い換えを見てみましょう。
例1:相手の提案に対して、懸念点を伝えたいとき
- 「でも」を使う場合: 「でも、それだと納期に間に合わないと思いますよ。」
- 置き換える場合: 「なるほど、その方法は効率的ですね。一方で、納期を考慮すると、〇〇のような進め方も考えられるかもしれません。」 「たしかに、素晴らしいアイデアです。それに加えて、納期については△△のように対応する必要があるかもしれません。」
例2:自分のミスを指摘されたとき、理由を説明したいとき
- 「だって」を使う場合: 「だって、ちゃんと指示聞いてなかったんですもん。」(これは避けるべき例ですが) 「だって、仕様変更があったから。」
- 置き換える場合: 「ご指摘ありがとうございます。あの件については、〇〇という状況がありまして、△△のような結果となりました。」 「申し訳ありません。仕様変更があったため、確認が不十分な点がありました。今後は△△のように対応します。」
例3:相手の感想や意見に対して、自分の考えが少し違うとき
- 「でも」を使う場合: 「でも、私はそうは思いません。」 「でも、それはちょっと違うんじゃないかな。」
- 置き換える場合: 「なるほど、〇〇さんはそう感じられたのですね。私は△△のように感じました。」 「たしかに、そういった見方もできますね。私としては、〜という点も重要だと考えています。」
言葉遣いと合わせて意識したいこと
「でも」「だって」を減らすことに加えて、次の点も意識することで、より穏やかで建設的なコミュニケーションにつながります。
- 相手の話を最後まで聞く: 相手が話し終わる前に否定の言葉を挟むと、相手は「聞いてもらえなかった」と感じます。まずは耳を傾け、相手の意見を理解しようとする姿勢が大切です。
- 穏やかなトーンと表情: 使う言葉だけでなく、声のトーンや表情もメッセージの一部です。たとえ丁寧な言葉を選んでも、険しい表情や強い口調では否定的な印象を与えてしまいます。
- 「I(アイ)メッセージ」を使う: 自分の気持ちや考えを伝える際には、「あなたは〜だ」という非難がましく聞こえやすい「You(ユー)メッセージ」ではなく、「私は〜と感じる」「私としては〜と考えている」という「Iメッセージ」を使うことで、穏やかに伝わりやすくなります。
まとめ
「でも」「だって」といった言葉は、無意識のうちに相手に否定的な印象を与え、コミュニケーションを滞らせる可能性があります。これらの言葉を完全にゼロにすることは難しくても、その影響を理解し、意識的に使用を減らすことで、会話の質を改善できます。
相手の言葉を一度受け止めるクッション言葉を使ったり、否定の接続詞を別の言葉に置き換えたりすることで、自分の意見や違いを穏やかに伝えることが可能になります。言葉遣いだけでなく、相手の話をしっかりと聞く姿勢や穏やかな態度も非常に重要です。
これらの基本的なコミュニケーション術を意識することで、相手との間に不要な壁を作らず、より円満で建設的な人間関係を築いていくことができるでしょう。すぐに完璧にはできなくても、日々の会話の中で少しずつ意識してみてください。